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サボタージュマニュアル -ダメな会社の作り方-

*本サイトはアフィリエイト広告を利用しています。
サボタージュマニュアル 雑記

「とにかく会議が多いクセに、重要なことが全く進まない」

「個人ならサッとできる手続きが、会社だと呆れるほどに手順が複雑化されてる」

「どう考えてもやり方を変えたほうが効率的なのに、妙に面倒なやり方にこだわっている」

会社勤めをしていると、理解のできない決まり事や手続きばっかりでウンザリしてしまうこと、ありませんか?

今回は、そんな方が読むとつい納得してしまうような書物の紹介をしたいと思います。前半部分はたとえ話を盛り込んでますので、書物の内容が知りたい方は「組織の崩壊を目論むスパイの手引き」に飛んでください。

とある規則の厳しい会社のお話

ここから書いているのはあくまでフィクションです。

とはいえ、私が経験した、あるいは見聞きしてきたことをいろいろ盛り込んで、盛りに盛った表現でお送りしております。

何事も規則、規則、規則。

ジョンどう
ジョンどう

課長、課内の消耗品が切れそうです。

課長
課長

ん、そうか。それでは、わが社の物品管理規則にのっとって、支給の申請を上げなさい。頼んだよ。

ジョンどう
ジョンどう

はい、承知しました。

(しまった、貧乏くじをひいたかも)

ジョンどう
ジョンどう

えっと、物品管理規則は…と。また堅苦しい書き方しててわかりにくいなぁ。

「物品支給の手続きについては別に示す」?ってことは別の規則かな。

あっ、こっちの物品管理細則にありそう。

申請書の書き方は、書類管理規則に基づくって?また違う規則か…

細かいところまで規則が決まっており、何をするにもまずは規則を確認しなくてはなりません。

ジョンどう
ジョンどう

書類のフォーマットは、A4サイズの中性紙、文字のサイズが10ptで、フォントは〇〇体、余白は上が何ミリで下が何ミリで、右が何ミリで左が何ミリ。レイアウトは…って、どれだけ細かく定めてるんだろう。

規則によっては、めちゃくちゃ細かく決まってることもあります。ちゃんと規則に従って手続きの準備は進めていきましょうね。

事を成すための、長く複雑に見える果てしなき一本道。

ジョンどう
ジョンどう

やれやれ、やっと書類が作れたぞ。次は承認をもらわなきゃ…

書類を作って終わりではなく、次は承認を貰いましょう。

ジョンどう
ジョンどう

課長、書類作成しました。確認をお願いします。

課長
課長

こら、ちゃんと書類管理規則を読んできたのか?

まずはちゃんと係長から点検を受けなさい。

ジョンどう
ジョンどう

あっ、すみません。もう一度規則を確認します。

印鑑を貰う先は、係長、課長、第1部長、第2部長、第3部長、総務係長、総務部長、副社長、社長って、消耗品一つで回る先多すぎでは!?

…仕方ないなぁ、係長、支給申請書の確認をお願いします。

係長
係長

何?そんな話は聞いてないぞ?

書類を回る前に一言言ってくれないと困るじゃないか!

こういった手続きの前には、回る先にあらかじめ一報入れてあげましょう。でないと、不要なトラブルの元です。

もっとも、一言言おうが言うまいが書類を見るだけなので大した手間でもないのですけど。

ジョンどう
ジョンどう

やれやれ、次は第1部長か。

でも午前中は出張で不在だったよな。仕方ない、先に第2部長に行くか。

第2部長
第2部長

何?第1部長を飛ばして私のもとに来たのか。

そんなことしたら第1部長に怒られるぞ!

ちゃんと順序通りに回らないとダメだ。第1部長に貰ってから来なさい。

たとえ効率的だと思っても、定められた順番を飛ばして回るようなことは、決してやってはいけません。

ジョンどう
ジョンどう

おかげで午前中は回れなかったよ。

時間はかかったけど、次は総務部長だ。

総務部長
総務部長

この書類、数字が半角で書いてあるな。書類を作るときには原則全角を使うというわが社のマナーを知らないのかね?

ジョンどう
ジョンどう

えっ!?、その…失礼しました。修正します。

(そんなこと規則には無かったような?)

すみません、書体はすぐ直しますので、先に内容の確認をしていただいてもいいでしょうか?

総務部長
総務部長

駄目だ、直して打ち出したものを持って来なさい。内容はそれから確認する。

偉い人に見ていただくのだから、横着してはいけません。たとえ内容が変わらなくても、体裁が整っていないとお目通りはかなわないのです。

そう、たとえルールに定められていなくても、全ては偉い人のさじ加減なのです。

ジョンどう
ジョンどう

数字を全部半角に修正か。中身は変わらないんだから見てくれてもよかったのに。

えっと、書類管理規則では「印鑑回り中に修正箇所が全体のおよそ半分を超えた場合、当初の内容から変わっている可能性をふまえ、再度書類を作成し直して一から回ること」って、また全員回り直し!?

書類作成では何がおきるかはわかりません。しっかり計画的に進めていきましょう。

すること自体が目的となっている会議

組織ですから、自分の仕事だけを回せばいいわけではありません。

課長
課長

おいジョン、消耗品の申請もいいが、今日は部内の会議があることも忘れんでくれよ?

ジョンどう
ジョンどう

えっ、定例会議は明後日ではありませんでしたか?

課長
課長

いや、最近顔合わせができていないということだったので、第1部長の発案で今朝急遽追加されたものだ。

臨時とはいえ、当然課内全員参集範囲だからな。

会議はとっても大切なものなので、たとえ至急の仕事を抱えていたとしても、個人の都合を優先するなんてことはあってはいけません。

会議は多くの人で話し合ってこそ意味があるものです。一言も発言しない人がいる?それでも参加することが大切です。

第1部長
第1部長

さて、今日集まってもらったのは他でもない。最近顔合わせの機会が少なくなっていたからな。

やはりこうして定期的に顔を合わせることはウンタラカンタラペラペラクドクド…

さて、何か話す議題があるものはいないかね?

ジョンどう
ジョンどう

いや、呼んだくせに雑談だけで、議題もないのかよ。

手続きを済ませたいんだけど、早く終わってくれないかな。

課長
課長

そういや1部長、以前話し合って決めた〇〇の件ですが、私が思うに改めて検討の枠組みを整理してウンタラカンタラペラペラクドクド…

部長
部長

おお、そういう意見もあるか。では、次の会議で改めてその議題を話し合うとしようかね。

よし、部員は明後日の会議までに資料をまとめ直しておくように。

(…検討の枠組みを整理ってどういう意味だ?まいっか)

部員
部員

折角グダグダな会議でやっと結論までたどり着いた議題を、思いつきでひっくり返すのやめてもらっていいですかね…!?

ジョンどう
ジョンどう

何も決まらない会議のお陰で2時間も消費か。このタイムロスは痛い…

しかも、おエライさんは定時で帰っちゃうからなぁ。

いくら会議で一度決めたことであっても、偉い人の疑問が残るならば納得行くまで話し合わなくてはいけません。

また、当然ですが会議があることは個人の仕事を遅らせる理由にしてはいけません。

本質から外れた並々ならぬこだわり

果てしない遠回りの繰り返しと、結果の出ない会議による妨害の末、やっと社長の承認をいただくフェーズまでたどり着きました。

ジョンどぅ
ジョンどぅ

やっと、やっとのことで社長に申請書を見ていただける段階になった…

秘書室員
秘書室員

社長の決裁ですか?

前日の15時までにスケジュール表に予約をしていただく必要がありますよ。

ジョンどぅ
ジョンどぅ

えぇ…消耗品の請求なのでそこまで重大な案件でも無いと思いますが、飛び込みでは駄目ですか?

秘書室員
秘書室員

うーん、お気持ちはわかりますが、緊急でもないのに予約無しで入ると社長は機嫌を損ねてしまいますし、結局決裁もされずに突き返されるので、やめたほうがいいかと。

偉い人へのお目通りをするのですから、自分の都合を優先してはいけません。しっかりと偉い人の意向に沿うようにしましょう。

ジョンどぅ
ジョンどぅ

今の時間は15時10分、ということは明日には入れないわけで、最速でも明後日になるのか。明日は見た感じ予定ガラガラなのに…

明後日の予定は…うわ、出張でほぼ不在じゃないか。ということは週明けにならないと入れないのか。

会議がなければ明日予約入れられたのに…

そして業務が進められないままに週明けを迎えます。こんな気分では週末も晴れ晴れと過ごすことは難しいでしょうが、お仕事であれば仕方ありませんね。

ジョンどぅ
ジョンどぅ

やれやれ、やっと社長決裁ができる。

えっと、予約時間は13時20分だったな。突き返されないようにもう一度確認しておこうっと。

課長
課長

おいジョン、13時10分から臨時の会議を行うから、会議室に集合だ!

ジョンどぅ
ジョンどぅ

えぇ!?

私20分から社長決裁案件入れてますので、せめてその間だけでも抜けていいですか?

課長
課長

何!?会議と個人の都合どっちが大事だと思ってるんだ!

決裁なんて、いくらでも再調整すればいいじゃないか!

何度も言いますが、会議はとっても重要です。自分の都合を優先してはいけません。

ジョンどぅ
ジョンどぅ

せっかく予定調整できたと思ったのに、また再調整か。

それはそれで社長がヘソ曲げそうで嫌だな…

そして臨時会議では特に重要な話が出ることもなく、グダグダと時間を過ごします。

ジョンどぅ
ジョンどぅ

やっと終わった。結局自分は一言も発しなかったし…

何も建設性がないくせに、よく3時間も話すもんだ。

もうすぐ17時、社長の予約は明後日だな。

そしていよいよ、社長決裁の日がやってきました。

ジョンどぅ
ジョンどぅ

失礼します。

消耗品の補給申請書の決裁をお願いします。

社長
社長

うーん、こうやって申請書だけもってこられても、その背景とかそういうものが全然わからないじゃないか。

申請に当たっての思考過程がわかるような資料を作って、もう一回持ってきなさい。

合議者の指導受けも忘れないように。

ジョンどぅ
ジョンどぅ

いやいやいや、

消耗品が切れたから補充してほしいだけの話じゃないか。何だ思考過程って。

こうして、申請書に添付する思考過程の資料を作り、また果てしない道をたどることになりました。

早くしないと、課内の消耗品が枯渇してしまいます。

そして、ここまでと同じような果てしない過程を経て、再度社長の決裁を受ける段階となりました。

社長
社長

消耗品の請求くらいで、ずいぶんと時間をかけるのだね。

決裁はしとくけど、ちょっと仕事のやり方を考えてもいいんじゃないかな?

ジョンどぅ
ジョンどぅ

おい、誰のせいでここまで回りくどい手続きをさせられたと思ってるんだ。

しかも、思考過程の資料はサラッと見て終わりか。

ペーパーレスならぬ、ペーパーマス

紆余曲折と、間に入る容赦ない会議、度々の作り直しを経て、やっとの思いで社長まで承認を頂くことができました。

ジョンどう
ジョンどう

やっと全員の承認がもらえた…

承認がもらえたら、印鑑回りした書類を清書するのか。

清書した書類をメールで補給係宛に送ればいいのかな?

補給係
補給係

いいえ、清書した書類を印刷して、申請者の印鑑と会社印を指定の場所に押してください。

押印した書類の正本は補給係あてに持ってきてもらえばいいですけど、正本のコピーは印鑑回りを行った相手あてにFAXで送付してください。

日本において、ハンコはとっても大切なものです。デジタル化が進んだとしても、その重要性はそう簡単に衰えるものではありません。

ジョンどう
ジョンどう

えっ、今持ってる清書のデータをメールで送っちゃだめですか?

補給係
補給係

いいえ、こういう規則になってますので、指示のとおりの申請方法でお願いします。

あと、押印した正本はPDFにスキャンして、カラー印刷したものと、印鑑回りに使った原本をあなたの課でファイルに保管しておいてくださいね。

ジョンどう
ジョンどう

まるで何かの儀式みたいだ・・・

作った書類は、大事な記録となりますので、ちゃんと保管しておきましょう。失くしたら大変です。

書類を送るときは、たとえ手渡しできる距離でもファックスを使いましょう。

デジタル化?いえいえ、紙は大切な記録手段です。

補給係
補給係

そうそう、会社印押してもらうときは、改めて書類申請したときと同じ経路で合議を貰う必要がありますから、計画的にお願いしますね。

申請様式はこちらにあるやつを使ってください。

ジョンどぅ
ジョンどぅ

・・・(唖然)

書類作りからの会議

補給係
補給係

はい、確かに申請書を受理しました。

それでは、後日実施する補給部の審査に上げますので、結果は追ってお知らせします。

ジョンどう
ジョンどう

えっ、申請書を出して、すぐに貰えるものじゃないんですか!?

社長まで承認を貰っている書類なのに?

社長はあくまで「申請書の書類を出す」「申請書に会社印を押す」ということを承認しただけであり、まだ申請通りに供給することを許可したわけではありません。

申請内容を許可するか否かは、また別の審査が必要になるのです。

補給係
補給係

すみませんが、消耗品の不正受領を防ぐため、このような手続きとなってまして。

そのため、各部署には余裕を持って申請を上げてもらうようにお願いしてます。

最近は申請書がめっきり上がってこないので、皆物品愛護に励まれているようで何よりですね。

ジョンどう
ジョンどう

申請が来てない?どこの部署も物がないって嘆いてたのに?

そして数日後。

ジョンどう
ジョンどう

そんな、あれだけ苦労して申請したのに、請求の半分しか出してくれないの!?

補給係
補給係

実は、第3次会議の際に第2部長から意見がありまして。

「今まで使用実績もないのにこんな量は要らないだろう。全量欲しいのなら、その物品の必要性について検討の枠組みを論点整理した上で、使用実績を論理的思考力を発揮してデータに纏め、思考過程を示して書類にまとめ上げてもらわないとダメだ」とのことで、最大限譲歩した結果、半分となりました。

ジョンどう
ジョンどう

どんだけ会議してるんですか・・・

そして第2部長、思考過程の資料と申請書見て承認しているくせに。

思考過程の資料と、使用実績はまた別の資料です。使用実績の資料なしでも半分は出してくれたのですから、会社には感謝しましょう。

副社長
副社長

ガチャ)おーい、ちょっと消耗品足りなくなったから貰っていくぞ。

補給係
補給係

あっ、はーい。どうぞ持って行ってください。

ジョンどう
ジョンどう

・・・不正受領防止が何だって?

厳正な規則はありますが、偉い人はそれを超越するのです。

面倒を回避した代償

課長
課長

おいジョンどぅ!消耗品一つ請求するのにどれだけ手間をかけてるんだ!

遅すぎるぞ!

ジョンどう
ジョンどう

すみません、手続きにここまで手間取るとは思いませんでして。

課長
課長

言い訳をするな!

他の人がやったときは、次の日には手に入れてたぞ。

しかも、要求の半分しか手に入らないとは何事だ!

ジョンどう
ジョンどう

翌日?こんな環境でそれは物理的に無理だと思うけど。

不思議に思って、過去に消耗品を手に入れてきた先輩に聞いてみることにしました。

先輩
先輩

ああ、消耗品?請求手続きが面倒だから、ここしばらくは皆自腹でしれっと買ってきてるんだよ。

消耗品がなくなりかけると、減りが極端に遅くなってることに気づかなかった?

あれは、手続きも自腹負担もしたくないから、減ってきたら皆使うのを控えてるんだ。

ジョンどう
ジョンどう

そういうカラクリだったのか・・・

先輩
先輩

社長の予約手続きは、今の社長になってからやるようになったらしいけど、ここまで規則が面倒になったり、会議がやたらと入るようになったのは今の副社長になってからかな。

副社長は業務改善で最高評価貰ってたね。

ジョンどぅ
ジョンどぅ

業務「改善」で面倒な規則増やされては、たまったものではないですね。

副社長
副社長

えー、来年度の予算についてだが、消耗品費は各部署の使用量が多くないため、削減することにした。

引き続き、物品愛護の精神に努めるように。

昨今は物価が高くなったから消耗品一つとってもウンタラカンタラペラペラクドクド…

使用実績がない予算は、削られて当然ですね。

面倒を回避した結果、自分で自分の首を絞めてしまっては元も子もありません。

まさか自腹で買ったものを実績に計上するわけにもいきませんから、今後はますます削られる予算に加えて、自腹での補充が続いていくことになるのでしょう。

めでたしめでたし。

注:この話はあくまでフィクションです。現実で見聞きしたことをミックスし、盛りに盛って書いてます。

組織の崩壊を目論むスパイの手引き

いかがだったでしょうか?いろんなところで見聞きしたことをミックスしたゆえ、かなりどブラックな感じの会社になってしまいました。流石にここまで極端な会社はないと思います。多分。

当初の話題に戻ります。

表題にしている「サボタージュ・マニュアル」とは、正式名称を「SIMPLE SABOTAGE FIELD MANUAL」と呼び、終戦頃に米CIAの前身であるOSS(Offiece of Strategic Services:戦略情報局)が作成した文書であり、あらゆる観点から相手の士気を下げるための妨害行為の数々がかかれたマニュアルです。内容的に「嘘じゃないか?」と思えるようなことも書いてますが、れっきとした公文書です。

かつては米軍の機密文書でしたが、現在では内容が無償で公開され、誰でも閲覧することができるようになっております。原文は英語ですが、日本語訳したものも販売されています。

下記の「Project Gutenberg」は著作権の切れた書物の電子化と公開を目的としたプロジェクトであり、複製、再配布はProject Gutenbergが出処であることを明記すれば自由とされています。

では、その中身を覗いてみることにしましょう。

なお、本記事の日本語訳については上記のProject Gutenbergの原文をDeepL翻訳ベースに意訳してます。もし原文と意味が違うという意見があれば、コメントにて教えていただければ幸いです。

序文

This Simple Sabotage Field Manual Strategic Services (Provisional) is published for the information and guidance of all concerned and will be used as the basic doctrine for Strategic Services training for this subject.
The contents of this Manual should be carefully controlled and should not be allowed to come into unauthorized hands.
The instructions may be placed in separate pamphlets or leaflets according to categories of operations but should be distributed with care and not broadly. They should be used as a basis of radio broadcasts only for local and special cases and as directed by the theater commander.
AR 380-5, pertaining to handling of secret documents, will be complied with in the handling of this Manual.

William J Donovan

“SIMPLE SABOTAGE FIELD MANUAL” by Project Gutenberg

本サボタージュマニュアル(暫定版)は、関係者全員の情報と指導のために発行され、この主題に関する戦略サービス訓練の基本教義として使用される。

本マニュアルの内容は慎重に管理されるべきであり、無許可の者に渡してはならない。

このマニュアルは、作戦のカテゴリー別にパンフレットやリーフレットにまとめてもよいが、大々的に配布せず、注意深く配布すべきである。ラジオ放送の基礎として使用されるのは、局地的で特殊な場合のみであり、指揮官の指示による場合に限る。

秘密文書の取り扱いに関するAR380-5は、本マニュアルの取り扱いにおいて遵守される。

ウィリアム・J・ドノバン

機密文書だったので、その取扱には慎重さが求められているものでした。

なお、ウィリアム・J・ドノバンはOSSの創設者であり、「アメリカ情報機関の父」「CIAの父」と呼ばれるような人です。

AR380-5は、簡単に言えば米軍の機密の取り扱い方法の基準のようなものです。

導入

a. The purpose of this paper is to characterize simple sabotage, to outline its possible effects, and to present suggestions for inciting and executing it.

b. Sabotage varies from highly technical coup de main acts that require detailed planning and the use of specially trained operatives, to innumerable simple acts which the ordinary individual citizen-saboteur can perform. This paper is primarily concerned with the latter type. Simple sabotage does not require specially prepared tools or equipment; it is executed by an ordinary citizen who may or may not act individually and without the necessity for active connection with an organized group; and it is carried out in such a way as to involve a minimum danger of injury, detection, and reprisal.

“SIMPLE SABOTAGE FIELD MANUAL” by Project Gutenberg

a.本文書の目的は、単純な妨害行為の特徴を明らかにし、その有効な効果を概説し、サボタージュを誘発し実行するための提案を提示することである。

b.妨害行為には、緻密な計画と特別な訓練を受けた工作員の使用を必要とする高度な技術を要するものから、普通の市民ができる無数の単純な行為まである。本文書では、主に後者のタイプを取り上げる。単純な破壊工作は、特別に用意された道具や設備、組織との積極的な関係を必要とせず、普通の市民によって、傷害、発見、報復の危険性を最小限にするような方法で個人的に実行できるものである。

導入部分から面白そうなことを書いてます。

以降、様々なシチュエーションにおける、まさしく嫌がらせな所業の数々が書いてあります。

その中に、「General Interference with Organizations and Production(組織や生産への干渉)」という項目があり、丁寧に会社規則と管理者側と労働者側に分けた数々の記載がなされてます。

組織と会議

(a) Organizations and Conferences

(1) Insist on doing everything through “channels.” Never permit short-cuts to be taken in order to expedite decisions.

(2) Make “speeches.” Talk as frequently as possible and at great length. Illustrate your “points” by long anecdotes and accounts of personal experiences. Never hesitate to make a few appropriate
“patriotic” comments.

(3) When possible, refer all matters to committees, for “further study and consideration.” Attempt to make the committees as large as possible — never less than five.

(4) Bring up irrelevant issues as frequently as possible.

(5) Haggle over precise wordings of communications, minutes,resolutions.

(6) Refer back to matters decided upon at the last meeting and attempt to re-open the question of the advisability of that decision.

(7) Advocate “caution.” Be “reasonable” and urge your fellow-conferees to be “reasonable” and avoid haste which might result in embarrassments or difficulties later on.

(8) Be worried about the propriety of any decision — raise the question of whether such action as is contemplated lies within the jurisdiction of the group or whether it might conflict with the policy of some higher echelon.

“SIMPLE SABOTAGE FIELD MANUAL” by Project Gutenberg

(a) 組織と会議

  1. すべてを「定められた順番」で行うことにこだわれ。決断を早めるためのショートカットは絶対に許してはいけない。
  2. なるべく頻繁に、そして長く「スピーチ」をせよ。そこでは自分の主張や個人的な経験を踏まえ、愛国心に満ちた持論を遠慮なく述べよ。
  3. 可能な限り、問題ごとに委員会を編成し、「さらなる研究と検討」を求めさせよ。委員会は5人以上のできるだけ大規模なものとせよ。
  4. 関係のない問題をできるだけ頻繁に持ち出せ。
  5. 連絡書、議事録、決議書等の正確な言葉遣いを追求せよ。
  6. 前回の会議で決定された事項を引き合いに出して、その決定の妥当性について再び掘り返せ。
  7. 注意を促せ。合理的であることを求めよ。後で恥ずかしい思いをしたり、困難な状況に陥る可能性がある早急な行動をさせるな。
  8. あらゆる決定事項の妥当性を心配せよ。組織が管轄すべきなのか、あるいは、上位組織の方針と対立するのではないかと疑問を呈せよ。

下線部は私的にテストに出てきそうな重要事項だと思ってます。

ジョンどう
ジョンどう

前回の会議の際にあった指摘事項についてまとめたものです。

確認お願いします。

課長
課長

これさ、事項ごとに優先順位とかないの?

解決にあたっては指摘事項を分析して、論点整理する必要があると思うんだけど、これはそこまで至ってない情報だよね?

ジョンどう
ジョンどう

いや、前回もそんなこと言ってないだろ。

そもそも順位付けしたところで本質にはなんの影響もないし、一体何をさせたいんだ全く。

第1部長
第1部長

アイテムごとのプライオリティをソートして、イシューをアナライズしたリザルトをエニュメレーションしなくちゃダメじゃないか。

プロブレムをネグレクトすることはあってはならん。しっかりミーティングでコンセンサスを得なくては。そのためにも課員にもデマケしてアグリーをコレクトすることはウンタラカンタラペラペラクドクド…

ジョンどう
ジョンどう

ええい、一々意識高いアピールで横文字を使うな。

かえって意味がわからなくなるじゃないか。

問題の本質部分には触れないくせに、やたらとどうでもいいことを指摘されたり、一度決定したはずの事項を掘り返して話が進まなくなったり、何でもかんでも委員会を編成するくせに、全然問題解決に貢献できていなかったり…

管理者および監督者

(b) Managers and Supervisors

(1) Demand written orders.

(2) “Misunderstand” orders. Ask endless questions or engage in long correspondence about such orders. Quibble over them when you can.

(3) Do everything possible to delay the delivery of orders. Even though parts of an order may be ready beforehand, don’t deliver it until it is completely ready.

(4) Don’t order new working materials until your current stocks have been virtually exhausted, so that the slightest delay in filling your order will mean a shutdown.

(5) Order high-quality materials which are hard to get. If you don’t get them argue about it. Warn that inferior materials will mean inferior work.

(6) In making work assignments, always sign out the unimportant jobs first. See that the important jobs are assigned to inefficient workers of poor machines.

(7) Insist on perfect work in relatively unimportant products; send back for refinishing those which have the least flaw. Approve other defective parts whose flaws are not visible to the naked eye.

(8) Make mistakes in routing so that parts and materials will be sent to the wrong place in the plant.

(9) When training new workers, give incomplete or misleading instructions.

(10) To lower morale and with it, production, be pleasant to inefficient workers; give them undeserved promotions. Discriminate against efficient workers; complain unjustly about their work.

(11) Hold conferences when there is more critical work to be done.

(12) Multiply paper work in plausible ways.

(13) Multiply the procedures and clearances involved in issuing instructions, pay checks, and so on. See that three people have to approve everything where one would do.

(14) Apply all regulations to the last letter.

“SIMPLE SABOTAGE FIELD MANUAL” by Project Gutenberg

(b) 管理者および監督者

  1. 何事も文書による指示を要求せよ。
  2. 指示を「誤解」せよ。受けた指示について延々と質問したり、延々と文書で問い合わせよ。屁理屈をこねてもいい。
  3. あらゆる手段を講じて、注文品の納入を遅らせよ。例え部分的には準備ができていても、完全にできあがるまでは渡してはならない。
  4. 新しい材料の注文は、現在の在庫がほとんどなくなるまでしないこと。納入が少しでも遅れれば操業停止に追い込める。
  5. 入手困難な高品質の材料を注文せよ。もし手に入らないようなら抗議せよ。「材料が悪ければ、成果物も悪くなる」と警告せよ。
  6. 仕事は常に些細な仕事から取り掛かれ。重要な仕事は非効率な者に割り当てよ。
  7. 些細な仕事に完璧を求めよ。少しでも不備があれば何度でもやり直させ、目に見えないような不備まで指摘せよ。
  8. 部品や材料を職場内の間違った場所に送るようにせよ。
  9. 新入社員を教育するときは、不完全で誤解を招くような教育をせよ。
  10. 士気を低下させるために、非効率な労働者に不当な昇進を与えよ。効率的な労働者を差別し、仕事に不平不満を持たせよ。
  11. やるべき重要な仕事があるときこそ会議を開け。
  12. もっともらしい方法でペーパーワークを増やせ。
  13. 許認可や指示、決裁手続き等は複雑化せよ。1人の判断でできるところにも3人の承認を求めよ。
  14. すべての規則を徹底的に適用せよ。

白線のオンパレードですね。

話せばすぐ伝わるのに、それでも資料を求めたりと書類による業務に拘る人、見たことありませんか?

変なところにやたら気合が入っているくせに、結局何を言いたいのかわからないスライド、見たことありませんか?

人一倍頑張っているはずなのに、全然仕事をしていない人のほうが高評価なんて心当たりがありませんか?

ジョンどう
ジョンどう

えぇ…決まってたことをしゃしゃり出てひっくり返し、他の人に散々怒鳴り散らして現場メチャクチャにしてる人が「最高評価」で、引っ掻き回されて苦労した人の評価が「普通」って、評価者は何見てるんだろう…?

本会議を開く前に事前会議をやり、その準備のために会議を開き、そのたびに同じ内容で違う資料を作らされている人、いませんか?

どうでもいいところで規則を厳しく適用するくせに、一番適用してほしいところ(労働基準法とか)をスルーされている人、いませんか?

労働者

Office Worker(会社員)とEmployee(従業員)に分けられてますが、まとめて書いていきます。

(c) Office Workers

(1) Make mistakes in quantities of material when you are copying orders. Confuse similar names. Use wrong addresses.

(2) Prolong correspondence with government bureaus.

(3) Misfile essential documents.

(4) In making carbon copies, make one too few, so that an extra copying job will have to be done.

(5) Tell important callers the boss is busy or talking on another telephone.

(6) Hold up mail until the next collection.

(7) Spread disturbing rumors that sound like inside dope.

(d) Employees

(1) Work slowly. Think out ways to increase the number of movements necessary on your job: use a light hammer instead of a heavy one, try to make a small wrench do when a big one is necessary, use little force where considerable force is needed, and so on.

(2) Contrive as many interruptions to your work as you can: when changing the material on which you are working, as you would on a lathe or punch, take needless time to do it. If you are cutting, shaping or doing other measured work, measure dimensions twice as often as you need to. When you go to the lavatory, spend a longer time there than is necessary. Forget tools so that you will have to go back after them.

(3) Even if you understand the language, pretend not to understand instructions in a foreign tongue.

(4) Pretend that instructions are hard to understand, and ask to have them repeated more than once. Or pretend that you are particularly anxious to do your work, and pester the foreman with unnecessary questions.

(5) Do your work poorly and blame it on bad tools, machinery, or equipment. Complain that these things are preventing you from doing your job right.

(6) Never pass on your skill and experience to a new or less skillful worker.

(7) Snarl up administration in every possible way. Fill out forms illegibly so that they will have to be done over; make mistakes or omit requested information in forms.

(8) If possible, join or help organize a group for presenting employee problems to the management. See that the procedures adopted are as inconvenient as possible for the management, involving the presence of a large number of employees at each resentation, entailing more than one meeting for each grievance, bringing up problems which are largely imaginary, and so on.

(9) Misroute materials.

(10) Mix good parts with unusable scrap and rejected parts.

“SIMPLE SABOTAGE FIELD MANUAL” by Project Gutenberg

(c) 会社員

  1. 注文を聞くとき、指定された量を間違えよ。似たような名前を用いたり、指定の住所を間違えよ。
  2. 官公庁とのやりとりを長引かせよ。
  3. 重要書類のファイルを間違えよ。
  4. コピーをするとき、過少に行い、余分なコピーをさせる手間を作れ。
  5. 重要な電話をかけてきた人を、適当な理由を用いて上司に取り次がせるな。
  6. 郵便物を次の収集日までとどめておけ。
  7. 内部告発のような不穏な噂を流せ。

(d) 従業員

  1. 仕事は怠惰に行え。仕事で必要な動きを増やす工夫をせよ。重いハンマーではなく軽いハンマーを使ったり、大きなレンチが必要なときは小さなレンチを用いる等、仕事に必要な動作を増やす方法を考えよ。
  2. 作業の中断をできるだけ多くせよ。旋盤やポンチのように機材を変えるときは、必要以上に時間をかけよ。切ったり、形を整えたり、その他の測定作業をしているときは、必要な回数の2倍の頻度で寸法を測定せよ。トイレに行くときは、必要以上に長い時間をかけよ。そしてそこに道具を忘れて、取りに戻れ。
  3. 言葉がわかっていても、外国語の指示はわからないふりをせよ。
  4. 説明がわかりにくいふりをして、何度も説明を受けよ。また、仕事に意欲的なふりをして余計な質問で監督を困らせよ。
  5. 仕事の出来が悪いのは、道具や機械、設備のせいだと主張せよ。
  6. 自分の技術や経験を、新人や素人に教えるな。
  7. あらゆる方法で行政を混乱させよ。書類の書き直しをさせるため、判読できないように記入したり、記入事項を間違えたり、省略したりせよ。
  8. 可能であれば、従業員の問題を経営陣に提示するグループに参加するか、グループの組織化に協力せよ。その際、経営者にとってできるだけ不便な手続きを求めよ。たとえば、再提出のたびに多数の従業員が出席を求められることや、苦情のたびに1回以上の会議を必要とすること、杞憂な問題を持ち出すことなどである。
  9. 流通経路を間違えよ。
  10. 良品と不良品を混合せよ。

ここまでくると、清々しいまでの嫌がらせですね。会社に不満がある人は実践する余地があるかもしれません。もちろん自己責任ですが。

サボタージュマニュアルの本質

長々とサボタージュマニュアルについて書いてきました。ざっくりまとめるならば、

  • 目的や結果よりも、そこまでの段取りを重視する
  • 本質から目をそらし、細かいところにこだわる
  • 問題解決のために、とにかく遠回りさせる

このあたりに集約できると思います。

冒頭のフィクションは、別にサボタージュマニュアルを意識して書いたわけではなく、私が見聞きした経験談がベースになってます。(多少盛ってますが)

それでも、サボタージュマニュアルに書いてあるようなことが何個も適用できました。ということは、案外当てはまってしまう企業は少なくないのかもしれません。

恐らくは、妨害工作を意図しているわけではないのでしょうが、昔から醸成された企業文化が、結果的に妨害工作のような悪習としてはびこっている、という事なのだと思います。

もしも、サボタージュマニュアルに書かれているようなことを執拗に求めてくる人が突然現れたのであれば、何かしらの意図を疑ってもいいのかもしれませんよ。

スパイから組織を守るためには

組織や従業員をそのような悪習から守るためにはどうすればいいのか。と言われれば、まずはサボタージュマニュアルに書かれていることと逆のことをすればいいと思います。

すなわち

  • 段取りよりも結果を重視する
  • 細かい所にはこだわらず、本質を追求する
  • 問題解決には最短経路を通る

ということになるのでしょう。

そのためには昔から決まっている風習や決まり事を切り捨てる必要が出てくるかもしれません。しかし、組織を本当に守りたいのであれば、痛みを伴う改革も、時には必要になるのです。

特に会社組織でそれなりに偉い立場の人にはサボタージュマニュアルを是非とも読んでもらいたいものですね。

偉い人
偉い人

ふむふむ、こんなことが書いてあったのか。

わが社においては、こういうことをする奴がいたら許さんからな!

そうそう、明日は急遽、臨時会議をすることになったから、担当者は準備するように。

ああ君、会議の通知文書を作成して、各部に配布したまえ。

社員
社員

この人、自分が「こういうこと」をしている自覚がない・・・ッ!!

なお、上記でサボタージュマニュアルを日本語訳した作者は、サボタージュマニュアルに対抗している「アンチ・サボタージュマニュアル」を出版しています。興味のある方は読んでみるといいでしょう。

それでもスパイを追い出せないときは

組織を守るために尽力しても、結局変えられないという結論に落ち着いてしまった時は、残念ですが自分が壊れる前に、その組織から脱出しましょう。

結果的に、組織はさらなる崩壊の道をたどることになると思いますが、それでも自分が壊れてしまうことに比べれば些細な問題です。

例えば、国の重要な組織にスパイが紛れ込んでいて、国ごと崩壊の一途をたどっている、とでもいうのならば踏みとどまることを考えてもいいのでしょうが。万に一つ、そういう状況になってしまった場合は、同じ境遇の仲間を見つけるようにして、一人では頑張らないようにしましょう。選ぶ相手は見極める必要がありますが。

脱出した後にどうするかは、一息置いて心身を休め、余裕ができたときに改めて考えればいいのです。

自分の身を守れるのは、最終的には自分しかおりません。余裕がなくなってくると、どんどん視野が狭くなり、考えも固まってしまいます。そうなると、気付かないうちに壊れるまで無理な環境で頑張ることになってしまいます。

おかしいと自覚ができているうちに早めの対策をとりましょう。


なお、今回の記事は両学長のこちらの動画も参考にしてます。

今回の所はこの辺で。

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