一昔前、情報を手に入れるためにはテレビや新聞雑誌、人づてを頼りにするくらいしか方法がありませんでした。
近年では情報技術の高度化に伴い、ほとんどの人がスマホやPC等からインターネットに接続し、容易に情報を手に入れることができるようになったのです。
情報を容易に手に入れられることは良いことではありますが、一方でそれに伴う問題が生じてきていることも事実です。
本記事では、情報との付き合い方について、私の考えを書いていきたいと思います。
その情報、何処から得ましたか?
情報を得る経路は様々ですが、その方法によって情報の正確性というものは大きく変わってきます。
得方によって情報はいくつかの種類に分類できます。分類方法は場合によって多少異なるようです。
一次情報
一次情報は、自分自身が直接見聞きした情報や、客観的事実のことです。
あるいは、記録として残っている映像や音声データも一次情報になります(この場合は無編集であることが前提です)。
間にフィルターがない分情報の正確性は最も高い事が特徴ですが、一方で一次情報を得るためには物事を直接自分が見聞きする必要があり、入手の難易度が高くなります。
二次情報
二次情報は新聞やテレビといったメディア、あるいは他人から伝わった情報のことです。出処がある程度判明していることも特徴です。
少々ややこしい話ですが、〇〇という事実に対し、××という人がこの情報を話していたとして、××に話された情報自体は二次情報になりますが、「〇〇ということを××が話していた」という視点になれば、それは一次情報になります。
一次情報よりも得ることが容易ですが、間に何らかの媒体が入るために情報にノイズが乗りやすく、正確性が若干下がります。出処がある程度わかっているため、得られた二次情報をもとに情報源をたどれば、より精度を高められます。
三次情報
三次情報は、二次情報が更に拡散され、拡散される中で情報の形も変わってしまい、出処も判明しなくなった情報です。
いつの間にか広がる噂話なんかは三次情報に当たります。
二次情報よりも入ってきやすいですが、情報の正確性も相当に低くなります。
こういった情報を得た場合はまず、その根拠や出処を確認してみましょう。二次情報よりも探すのは手間ですが、似たようなトピックで検索をかけてみれば見つけられるはずです。
伝わる間に変わる情報
皆さんは小さい頃に伝言ゲームで遊んだことはありませんか?少人数ならまだしも、伝える人数が増えてくると、終盤では全く違う文になる経験をした人は少なくないと思います。
情報は伝わる間に尾ひれが付いたり、一部が消えたりしてその形が変わることが多々あります。一次情報をそっくりそのまま他に伝えることというのは存外に難しいものなのです。
これは、発信側と受信側で少なからぬフィルターがかかる事が原因です。フィルターには下記のようなものがあります。
- 情報に対する理解度
- 都合の良い(悪い)情報の取捨選択
- 間違った解釈
- 意図的な情報改変
このようなフィルターのために、情報を正しく伝えることというのは難しくなるのです。
具体的に情報が変わっていくプロセスも考えてみました。
例1 〜一緒に歩いていたA男君とB子さん〜
ある日、登校していたA男君は、通学路の途中でB子さんと出合い、軽く挨拶を交わした後は行く方向が同じだったので、なんの気なしにそのまま一緒に通学しておりました。
その様子を見ていたC美さんは、登校したあとでクラスメートの女子に話しました。
ねえねえ、今日の朝、A男君とB子ちゃんが一緒に登校してる姿を見ちゃったんだけど、あの二人って何かあったのかな?
C美さんは詳しい情報が知りたくてクラスメートに話をしてみたのですが、これが引き金になりました。
ねえ、今朝、A男君とB子ちゃんが仲良く一緒に手をつないで歩いてたらしいよ?
A男君とB子ちゃん、付き合ってるんだって!
二人はなんの気なしに一緒の方向に歩いていただけなのに、しまいには噂に尾ひれが付いて付き合っているなんて噂が立つようになってしまいました。
この場合、C美さんが最初に見た事実が一次情報、C美さんがクラスメートに話したことが二次情報、そこから尾ひれが付いて広まった噂が三次情報になります。
付き合っているという情報が流れていることを当該者が聞き、その出処を辿ろうとしても、所詮は噂話なので出処にたどり着くことは困難です。
例2 〜家計見直しプロのRさんの場合〜
Rさんはお金の事情に詳しく、様々な視点から家計のアドバイスをしてくれます。
家計を圧迫する要因の一つに、必要以上に入りすぎた保険というのが挙げられます。
万が一に備えてと保険の加入を促されるでしょうが、多くの場合これらは不要です。
保険に加入するなら、その前に自分自身が現時点で受けられる公的な支援制度を知りましょう。それを知った上で、足りないと思う分を追加で入るようにすれば、保険料はかなり安く抑えることができ、浮いた分を投資に回したほうが効率的な資産形成ができますよ。
しかし、私は保険に入っていたおかげでこれだけの保険金を受け取ることができました。保険は入っておいたほうがいいんじゃないでしょうか?
確かに、保険に入っていたおかげでお金が手に入ったという人がいますが、それは本質的にはギャンブルで一儲けしたのと大して変わりません。一部の人は儲かるでしょうが、全体で言えば必ずしもそうなるものではないのです。
Rさんは保険に対しては必要最低限のスタンスとしています。一方で、いろいろ勘案した上で加入することについては否定しておりません。Rさんの言い分を要約すればこんな感じです。
- 保険料は家計を圧迫する要因の一つとして挙げられやすい
- 保険加入の前に公的制度によるサポートを知るべき
- サポートを知った上で、必要な分を入ればよい
- それでも不安な人が加入することは否定しない
- 保険で得するのは一部の人だけ。ギャンブルで勝ったのと大きく変わらない
- 貯蓄は貯蓄、保険は保険、投資は投資。混ぜてしまうと中途半端な結果しか得られないので、保険で資産形成は考えるべきではない。
さて、このような理論をRさんはネット上でも展開し、家計の見直しについて絶大な人気を誇るようになりましたが、見る人が増えるに連れて反対意見を唱える人も出てくるものです。
Rは保険は一切不要と言っているが、それは危険な考えだ!万が一お金が足りなくなったらどうするつもりだ!
Rに相談したら、加入してる保険を全部解約させられるぞ!
保険はギャンブルなんて、トンデモ論もいいところだ!保険で助かっている人だって大勢いるんだぞ!
上で書いているRさんの言い分をすべて知っていれば、これらの発言は一部を切り取ったものに過ぎないと理解できますが、先にこれらの発言に触れてしまった人からすれば、Rさんに対する見方は随分と違ったものになるでしょう。
上のA男君とB子さんのケースは情報が伝わる間に尾ひれが付いたパターンですが、Rさんのケースは伝わる情報が欠落した結果、Rさんの言いたかったことが大きく歪曲してしまったパターンになります。
このように、情報は伝わる間に尾ひれが付いたり、一部が欠落して伝わってしまうことが少なくありません。情報を受け取る際はこれらに留意して、なるべく精度の高い情報を得るようにしましょう。
選挙のためだったら何でもする、誰とでも組む。そんな無責任な人たちに負ける訳にはいかないのです!
〇〇新聞
候補者A氏「選挙のためだったら何でもする」
〇〇選総選挙前演説「無責任な人たちには負けない」と意欲的
〇月〇日に実施される選挙に向け、各立候補者はそれぞれの所信を述べた。候補者A氏は、表明の中で「選挙のためだったら何でもする、誰とでも組む。そんな無責任な人たちに負ける訳にはいかないのです!」と意欲的であった。
情報も、伝え方によっては真逆の意味に伝わってしまう場合もあります。
ドサクサに紛れて広まる「偽情報」
広まる情報の中には元から根拠のない「デマ」や、映像を加工して作られた「フェイク映像」なんてのが含まれている場合もあります。
近年は映像技術の進歩により、画像の加工も簡単にできるような時代となりました。個人レベルでも画像の加工がかなり簡単にできるのです。
デマは突然現れ、場合によっては大混乱を招くケースもあるようです。
今となっては10年以上も前になってしまった東日本大震災においても、多くのデマが流れました。下記がその一例です。
※デマです
- コスモ石油が保有する千葉のコンビナートが爆発した。それに伴って有害物質を含んだ雨が降る可能性がある
- 県、あるいは自衛隊が個人からの支援物資を受け付けている
- 〇〇時で関東の電力備蓄が枯渇するため、関西からも送電を行う
- 震災の影響で埼玉の水道水が危ない
- 震災で部屋に閉じ込められた。場所は(架空の住所)
※デマです
コンビナートのデマは実際に私のもとにもチェーンメールが届きました。当時住んでいた所ではこれを真に受けて緊急の放送が流れるくらいに混乱したものです。
デマを拡散する人の心理としては、やはり「他の人にも早く知らせてあげたい」というものがあるのでしょうが、たとえ緊急事態であっても、出処の確かでない情報は拡散させるべきではありません。
デマが流れることで、業務に支障をきたしたり、本当の情報が埋もれたりしてしまう危険性が出てきてしまいます。
ちなみに、熊本地震の際には「動物園のライオンが脱柵した」とわざわざ画像つきでフェイクニュースをツイートした人が偽計業務妨害罪で逮捕されています。
冗談半分のつもりでも、非常事態において意図的に混乱を招くような行為がしたいのであれば、それ相応の覚悟を持ちましょう。後から言い訳は通じません。
日本の場合、憲法21条で「表現の自由」が認められていますので、フェイクニュースを流すことは表現の自由だと主張する人もいるかもしれませんが、一方で12条に「これを濫用してはならない」「常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う」としていますので、何でもかんでも許されるわけではないことは認識しておきましょう。
また、発信したことによって特定の個人や団体等の権利を侵害すれば、刑事罰に問われることもあります。フェイクニュースにおいて問われる可能性がある罪は下記があります。
- 偽計業務妨害罪
- 名誉毀損罪
- 信用棄損罪
- 内乱罪
- 外患誘致罪
- 私戦予備罪
加えて、内容によっては海外の法律に抵触する可能性も否定できません。
エイプリルフールのように笑って済ませられるようなフェイクニュースを流すのは別に構いませんが、いずれにせよユーモアも時と場合を弁えるようにしましょう。
AIの台頭とフェイクニュース
2023年に入ってから、ChatGPTやAIアートのような「生成系AI」の技術が急に台頭してきました。
特に、AIアートは「プロンプト」と呼ばれる単語の組み合わせによってイラスト調のものから実写に見えるものまで、様々な画像を比較的短時間で生成することができてしまいます。
これらの技術はうまく活用すれば非常に便利なものですが、当然悪用を試みる人が出てくるものであり、現実でAIを使用した偽物の映像を使い、フェイクニュースを流す事例が起きています。
具体的なもので言えば、下記のようなものがありました。
画像だけ見せられた場合、本物と勘違いしてしまうことがあるのもうなずけてしまいます。
画像がAIによる生成かどうかを判別する方法としては、現時点では「とにかく細部を見る」ことが挙げられます。
AIは全体としてはそれっぽい雰囲気で画像を作ることが得意ですが、一貫性をもった作成は苦手です。
例えば、人物で言えば左右のパーツが(特に瞳)が極端に非対称になっていたり、手足の指など細かい部分が歪な形になっていたりすることがあります。
風景で言えば、建物の模様や配置が途中で不自然になっていたり、文字がよくわからない事になっていたり、という点から判別ができる場合があるようです。
しかし、生成された画像を人の手で不自然なところを修正されたりすると、判別の難易度は上がります。
実際、AIでイラストのベース部分を作成し、細かいところを修正して上げている絵師さんというのも、私が見た感じ少なくはないようです。
また、AI技術も進化を続けていますので、そういった不具合が解消される日がくるのもそう遠くはないかもしれません。
「情報に使われる人」にならないために
昨今では、ほとんどの人がスマホを持ち、気軽に情報へのアクセスができるようになりました。
しかし、得られる情報というのは玉石混交です。正しい情報もあれば、嘘の情報もあるのです。
高度情報通信社会である現代で正しい情報を得て、正しい行動をするための心構えを書きたいと思います。
受けた情報を鵜呑みにしない
情報が入ってくる媒体は多数ありますが、いずれの場合でも受けた情報を鵜呑みにして、即座なリアクションはしないようにしましょう。
一先ずは「ああ、そんな情報があるんだ」くらいのスタンスで受け取るようにして、冷静に対応しても手遅れになることはそうありません。
情報の出処を探るクセをつける
情報を受け取ったら、その出処を確認してみましょう。
出処が公的機関であったり、テレビ等であればそれなりの信頼性が出てきますが、ただの人づてであったり、SNSで拡散されているだけの情報であれば信頼性は怪しくなります。
ただし、テレビ等のマスメディアの場合、発信している会社によって伝え方が異なる場合があります。できれば複数の会社が発信している情報を比較してみましょう。
◯◯することは体に悪いことで、長期的に見れば死に至る原因になるんだ!
テレビで言っていたと知り合いのXXさんが言ってたぞ!
この場合、一次情報を加工したテレビの情報を受け取った他人から聞いた話なので、情報の信憑性は低いですね。
情報発信する時は根拠を明らかにする
上記とは逆に、自分から情報を発信する時は出処を明らかにしましょう。
それも、人から聞いたようなレベルの話ではなく、公式に発表された根拠となる情報を示すことが大切です。
もちろん、自分の体験談や意見感想を述べるような場合は根拠を示すことは難しいかもしれません。その場合はその旨を明示するようにしましょう。
それって、あなたの感想ですよね?
私のブログも、可能な限り出処は示すようにしてますが、あくまで私の考えを書いているということには留意願います。
知識をつける
大変だ!〇〇の石油コンビナートで火災が発生したぞ!有害な煙が発生して、水銀の雨が降ってくる!
こんなデマが流れたとして、化学を勉強している人だったらどう思うでしょう?
石油コンビナートならせいぜい石油か可燃ガス、つまりは有機物だよな。水銀は一体何処から出てきたんだろう?
と、疑問を持つことができ、情報の真偽を調べることに繋がると思いますが、何も知らない人だと大慌てで情報を拡散してしまうかもしれませんね。
全てに関する知識を持てと言うつもりはありませんが、知識を多く持てば持つほど、デマに騙されにくくなることは確かです。
また、市場に出回っている様々な本を読んでみることで知識が増えていき、より情報に対する姿勢を慎重にすることもできます。
様々な知識の書かれた本もあれば、情報の受け取り方そのものに言及する本もあります。
自分で判断する
情報を受け取って、最終的にその情報の真偽、とるべきリアクションを決定するのは自分自身です。
仮に誰かから情報を持ちかけられ、行動を促されたとしても、その行動によって発生した結果の責任をとるのはその「誰か」ではないのです。
情報を得ることは容易になりましたが、情報の正しい扱い方は昔からそう大きく変わりません。
知識を持ち、正しい情報を手に入れて、正しい行動が取れるように、日頃から情報リテラシーを高く持って生活するようにしましょう。
今回の所はこの辺で。
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