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それ、本当に“安全第一”?──形だけの対策に潜むリスク

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安全第一 雑記

「安全第一」──この言葉、現場系の仕事をしている方なら何度も耳にしたことがあると思います。
工事現場はもちろん、工場、物流、インフラなど、いわゆる“安全管理がうるさい”とされる業界では、掲げるのが当たり前のスローガンです。

しかし、その「安全」は、本当に現場を守るものになっているでしょうか?
事故が起きれば業務への支障だけでなく、企業としての信頼を大きく損なうことになります。だからこそ、安全対策は必要不可欠──それは間違いありません。

でもその一方で、「安全のため」という名目で行われている数々の施策の中には、「それ、誰のため?」と首をかしげたくなるものが存在するのも事実です。

この記事は、そういった“名ばかり安全管理”に疑問を感じたことのある方や、これから安全体制を整えようと考えている方に向けて、現場目線でのリアルをお届けします。

なお、日本では国としても労働者の安全を守るために、労働安全衛生法などの法律が整備されています。
制度の理念は素晴らしいものですが、それが現場にどう実装されているかは、また別の話です。

安全を意識した取り組み

多くの会社では、何かしらの形で安全を意識した取り組みを行っていることでしょう。

その背景には、「他社で起きた重大事故を教訓とする」「過去に自社で事故があり、風化を防ぎたい」といった意図があります。
実際、“大きな事故は忘れた頃にやってくる”とも言われるように、日頃の備えこそが重要なのは間違いありません。

安全への取り組みは、大きく「直接的な対策」と「間接的な対策」の2種類に分けられます。

直接的なパターン

これは、事故そのものを物理的に起こさないようにするタイプの対策です。

作業員
作業員

イテテ……高所作業してたら足を滑らせて、ハシゴから落ちちゃいました。

監督
監督

大丈夫? 大きなケガじゃなくてよかったけど……スニーカー履いて作業してたの? ハーネスは?

作業員
作業員

すみません、急いでたのでこのままで……それに、現場にハーネスも無くて……

監督
監督

ダメだよ、それは。
安全靴は会社で支給してるし、ハーネスがないなんて問題外。
これを機にちゃんと導入を検討するよう、上に掛け合うよ。
作業前には装備のチェック、ちゃんとやろうか。

今どき、ここまで“ザル”な現場は少ないと思いますが、あくまで分かりやすい例として。
直接的な対策は効果がはっきり見えやすく、即効性もあります。ただし、あらゆるリスクに都度対応していくと、ルールや装備がどんどん増えて肥大化していくという副作用も。

「現場猫」などのネットミームに共感してしまう方もいるのではないでしょうか。

からあげのるつぼ(@karaage_rutsubo)さんがTwitter(現X)で書く現場猫のコラ画像には共感できる人も多いかもしれません。

間接的なパターン

一一方で、過去の事故や事例を教育に活かし、作業員自身の判断力を育てていくのがこのタイプ。

作業員
作業員

あれ? この状況……前に教育で聞いたやつだ。
たしか、〇〇が起こる可能性があるんだっけ。注意して作業しよう。

間接的な対策は、装備の増加などは避けられる一方、作業員の“意識”に頼る部分が大きいです。
教育を受けても忘れたり、忙しい現場で無視されてしまうリスクもあります。

だからこそ、多くの現場では 定期的な教育やトレーニングの反復 を通じて、意識の定着を図っているのです。

一見立派、でも逆効果な対策

安全対策という名目で行われているものの中には、「現場の安全」という本来の目的を見失い、“やること自体が目的化”してしまっているケースもあります。
ここでは、筆者が実際に見聞きした、ちょっと首をかしげたくなるような取り組みをいくつかご紹介します。

毎月発行される「安全コラム付き社内誌」

ある会社では、安全意識を高める目的で、部署ごとに交代で社内誌にコラムを寄稿するルールがありました。
最初のうちは良いアイデアかもしれませんが、定期化されることで“義務感”が先行し、徐々に負担になっていきます。

偉い人
偉い人

来月の社内誌、安全コラムの担当はうちの部署だ。A君、執筆を頼むよ。締切は来週末ね。

社員
社員

うわ、またですか……今手一杯なのに……

偉い人
偉い人

何を言うか。普段から業務調整はしっかりやってもらわないと。
社内誌に載るのは名誉なことなのだぞ!

社員
社員

……やらせていただきます。(ってか、断れない雰囲気じゃん)

しかも、せっかく書いた原稿も、上層部の“点検”という名のフィルターを何重にも通されることで、最終的には別物の“綺麗な文章”に変わってしまうというオチつき。

加えて、そこまでして発行された社内誌を、果たして何割の社員がちゃんと読んでいるのでしょうか?

会議ばかり増える「安全会議地獄」

安全に関する会議自体は必要ですが、それが
課内→部内→支社→本社→臨時会議……と、やたらと回数が増えると、本来の業務が回らなくなってしまいます。

偉い人
偉い人

明後日は部の安全会議。各課、議題を出すように。あと明々後日は支社の安全会議だ。資料の準備を忘れずに。

社員
社員

部長! 〇〇課で誤操作による事故が発生しました!

偉い人
偉い人

なにっ、それは大変だ。明日、臨時の安全会議を開く! 原因と対策の資料を明日までにまとめて報告してくれ!

〇〇課
〇〇課

えっ、今事故対応で手一杯です!明後日の部会議で報告じゃダメですか!?

偉い人
偉い人

ダメだ! 臨時会議は定例会議と別物だ。混同するんじゃない!

報告の速さは重要ですが、臨時会議を開くことで現場がさらに疲弊しては本末転倒です。
会議のための会議になっていないか、振り返る必要があります。

調査名目の“意味不明なテスト”

上層部や外部監査が現場の安全状況を確認する「安全調査」もよくあります。
客観的視点からリスクを洗い出すのは非常に有意義ですが──

調査官
調査官

〇〇部長の安全指導方針って覚えてる?

社員
社員

えっと……〇〇です。(あぶな、事前に確認しててよかった)

調査官
調査官

では、XX年に△△部署で起きた事故では、負傷者は何名でどんな怪我だった?

社員
社員

えっ!? ……すみません、わかりません。

調査官
調査官

ふむ、教育がまだ足りないようですね。

こんな“マニアッククイズ”を正解したところで、果たして現場の安全に何の意味があるのでしょうか?

形骸化した「休養規則」

労働者の健康と安全を守るために休養時間を設定する会社もあります。
一見素晴らしい制度ですが、実際には“抜け道”が横行していたり、現場にとって機能していないことも多々あります。

社員
社員

この作業、20時終了予定だから
規則上翌日の計画は10時始まりにしないと……

偉い人
偉い人

19時59分終了で予定表を組めばいいじゃないか。
そうすれば翌日も普通に開始できるだろ?

社員
社員

……それ、意味ある?

また、休養が制度上は認められていても、実際には“朝礼があるから出てこい”などと出勤を強要されるケースも。

制度を整えても、実際に“安全に貢献しているか”まで見なければ、単なるポーズになってしまいます。

そもそも実施困難な作業手順

事故を受けて作業手順を見直すことは、安全確保のうえで重要な取り組みです。
しかし、現実には“実行が極めて困難な手順”が策定されてしまうケースもあります。

偉い人
偉い人

先日発生した事故を踏まえ、〇〇の作業は以下のように変更する。
まず△△を確認後、××を挟んでから……(延々と手順が続く)

社員
社員

……いや、現場の緊迫した状況でこんな手順、無理でしょ。

偉い人
偉い人

これは全て“現場の安全”のためだ。
すぐ本手順を適用するように。

社員
社員

試行もなしで!?

そして現場では──

社員
社員

この現場であの手順とか……無理だろ。
えーっと、最初は〇〇して……次は何だっけ? うわ、危なっ!

ガン!!

偉い人
偉い人

昨日の事故は、定めた作業手順が守られていなかったことが原因。
現場の意識不足が招いた結果だ。

社員
社員

……そんな無理な手順を押し付けておいて、現場のせいって……!

事故が起きたとき、現場がルールを守らなかったという“結果”だけを根拠に責任を押しつける。
手順そのものが“守れないもの”だったとしても、です。
これでは、現場の声を無視した“安全”になってしまいます。

本来業務を圧迫する安全活動

ここまで紹介してきた事例にも通じますが、安全活動が本業の妨げになっている──そんな現場も珍しくありません。

社員
社員

あー、今日こそ早く帰りたい。
連日の残業でヘトヘトだし……

部長
部長

おい、今月の安全調査レポートとパトロール報告はまだか?
明日の午前中には副社長に報告するから、今日中に仕上げて提出してくれ!

社員
社員

えっ!? ……(他の仕事も終わってないのに……)

夜中の2時過ぎ、ようやくレポートが仕上がり、社員は帰路につきますが…

キキーッ! ガシャーン!!


部長
部長

昨晩、Aが帰宅途中に交通事故を起こしました。
幸い、命に別状はありません。

副社長
副社長

ふむ、安全パトロールも実施されていたし、
会社の安全管理体制には問題なさそうだな。

社員
社員

いや、その“安全活動”のせいで事故起きたようなもんでしょ……

安全のために行っている活動が、結果的に事故の引き金になっている。
それでも「体制には問題なし」と結論付けられてしまう。
この矛盾こそが、現場を疲弊させる一番のリスクではないでしょうか。

その取り組み、何を守るためですか?

安全活動の目的は、「事故を防ぐこと」「現場の人を守ること」のはずです。
でも、実際には“会社の保身”のために運用されているだけのように見えることも少なくありません。

筆者は、ある会社で発生した事故の調査報告書を何度も見てきました。
その中身は──

○○に関する事故調査報告書

【社内の安全管理状況】
定期的な安全会議と教育が行われていたことから、安全体制に不備はなかった。

【業務管理上の対応】
ワークロード調整と適切な業務配分がなされていたため、業務管理上の問題は認められない。

【事故原因】
現場責任者の判断ミスが主因と推定される。

要するに、会社側の体制に問題はなかった。現場の責任。
──このパターンがほとんどでした。

ジョンどぅ
ジョンどぅ

いや、あの現場は常に人手不足の割にあれもこれもやろうとするから、
慢性的に余裕なかったのですが…?

ある死亡事故では、研修を終えたばかりの新人を、いきなり深夜作業に投入。
それでも「業務管理に問題はなかった」とされました。
実情を知っている人ほど、「書類の美しさ」と「現場の現実」のギャップに違和感を抱いていたのです。

他にも、そんな体制に勇気を出して声を上げた人の話をきいたこともあります。

普段から「安全確保のための作業中断をためらうな」とか散々言ってますけど、いざそういう場に出くわしたときに上層部は「いいから続けろ」と中断させてくれませんでしたよね!?

現場が安全のため中断と判断しても、上層部が中断させてくれない。それがこの職場の現状ですよ!

この人が言っていることはまったくもって正しいです。よく言ったと思います。

しかし残念ながら、この声が届くことはありませんでした。
その数年後、残念ながらこの現場はまた重大な死亡事故を発生させています。

声を上げた人がいても、会社の仕組みが変わることはほとんどありません。
「形だけの安全対策」に対して、本気で疑問を持ち、行動する人が評価されない構造があるのです。

形式的に“やっていること”が安全管理の証明になってしまえば、
その内容がいかに現場を苦しめていても、表向きは「問題なし」。

その結果、ますます頓珍漢な対策が追加され、現場の負担は増えていく……。
そんなループに陥っていませんか?


あなたの会社の安全体制は、いったい何を守っているのでしょう?
現場の人命でしょうか? それとも、会社の体面でしょうか?


どうか、現場を本当に守るための“安全管理”が、形だけでなく中身としても整うことを願っています。

意味不明な業務についての話は、こちらの記事でも触れています

今回の所はこの辺で。

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