ビジネスにおいて重宝されやすいスキルの一つとしてITスキルが挙げられます。
この記事では、一定レベルのITスキルを幅広く学ぶことができる資格の一つ、応用情報技術者試験について書いていきます。
IPAが主催する情報処理技術者試験のレベル3
応用情報技術者試験は、情報処理推進機構(Information-technology Promotion Agency=略してIPA)が開催する情報処理技術者試験の一つです。
IPAは経済産業省管轄の独立行政法人であり、日本においてITを推進するために様々な活動をしています。資格試験もその一環であり、資格の取得を目標として技術者の意欲向上に貢献したり、技術の水準を資格という形で示していたりします。
IPAでは下記の通り様々な資格試験を開催しています。
(出典:情報処理推進機構の試験概要ページ)
各資格によって「共通キャリア・スキルフレームワーク」というレベル付けをしており、そのレベルは下記のとおりです。
レベル4 | 情報処理安全確保支援士試験 |
システム監査技術者試験 | |
ITサービスマネージャー試験 | |
エンベデッドシステムスペシャリスト試験 | |
データベーススペシャリスト試験 | |
ネットワークスペシャリスト試験 | |
プロジェクトマネージャー試験 | |
システムアーキテクト試験 | |
ITストラテジスト試験 | |
レベル3 | 応用情報技術者試験 |
レベル2 | 基本情報技術者試験 |
情報セキュリティマネジメント試験 | |
レベル1 | ITパスポート試験 |
応用情報技術者試験は共通キャリア・スキルフレームワークにおけるレベル3相当になります。
IPAにおける対象者像は「高度IT人材となるために必要な応用的知識・技能をもち、高度IT人材としての方向性を確立した者」とされています。
基本情報技術者との違い
応用情報技術者と基本情報技術者との違いですが、基本情報技術者の人物像が「高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者」とされているのに対し、応用情報技術者は「高度IT人材となるために必要な応用的知識・技能をもち、高度IT人材としての方向性を確立した者」とされています。
基本情報技術者は試験がすべてマークシート形式、またはパソコンを使用したCBT形式による受験も可能となっています。合格率は25%前後(CBT方式だと40%前後)と言われています。
応用情報技術者試験はマークシート形式+記述式となっています。
なお、この2つの試験に出てくる科目の範囲に大きな違いはありません。応用情報技術者のほうが難しいとは言われていますが、一方で基本情報技術者ではプログラミング科目が必須になっているため、プログラミング未経験者からすると応用情報技術者のほうが簡単、という声もあるそうです。
どちらを受験するほうがいいのか?という質問については、私としては下記のメリットを踏まえると応用情報技術者をオススメしますが、難易度の高い試験であるため、ステップアップの意味で基本情報技術者からチャレンジするのも十分アリです。
応用情報技術者試験を受けるメリット
応用情報技術者試験を合格することによって得られるメリットを考えてみました。広範な知識を得られる以外にも、他の試験における科目免除があったりと、なかなかに有用なメリットが多いです。
ITに関する広範な知識を得ることができる
応用情報技術者試験では主に下記の勉強が必要になります。
- 基礎理論
- コンピュータシステム
- 技術要素
- 開発技術
- プロジェクトマネジメント
- システム戦略
- 経営戦略
- 企業と法務
広い範囲を学ぶことになる分、ITに関する知識を大幅に強化できることは間違いありません。ブログを運営する上でもIT知識を持っていると対処能力はかなり高くなります。
加えて、プログラミングやセキュリティといった技術的な要素を学ぶこともそうですが、実は企業経営論や法律、財務会計といった内容にも触れることができます。独立開業を考えている方にもいい勉強になるでしょう。
中には貸借対照表のように簿記で学んだ内容も出てくるため、簿記の勉強とも案外相性は悪くないように思えました。
簿記3級を学んだ時の記事は下記を参考にしてください。
IT企業等から高い評価を得られる
応用情報技術者は国家資格であり、かつIT企業からの評価が高い傾向があります。履歴書にも書くことができる十分な資格です。
日本のITの進歩は遅れていると言わざるを得ない状況であり、IT人材も不足していると言われがちです。その中においてITに対し一定のスキルを持っていることを証明できるということは大きなアドバンテージにできます。
とはいえ、ITパスポートレベルだと「基礎の基礎は知っている」程度であり、そこまで有利性があるわけでもありません。基本情報技術者レベルだとある程度評価はされますが、それでも十分とは言えないようです。
周囲のIT系企業に勤務する人に聞いても、応用情報技術者レベル以上は持っておいたほうがいいという意見が多数を占めています。
この記事を読んでいるあなたがIT系企業への就職や転職を考えている場合、応用情報技術者試験に合格していると有利になりやすいでしょう。
その他、高度なITスキルを持った人材を求めている一部の官公庁においては試験合格が任用資格とされている場合もあり、その場合でも有利に働きます。
上位試験の科目免除が受けられる
応用情報技術者試験に合格した場合、上位試験の科目免除を受けることができます。
具体的には上の表で言うところのレベル4相当の試験のうち、共通的知識を問う「午前I」が免除できるため、午前II以降の科目に対してより集中的な勉強ができるようになります。
このメリットは基本情報技術者試験にはありません。
ただし、免除が受けられるのは試験合格から2年間に限られます。例えば、2021年秋の試験で合格した場合、免除が有効になるのは2023年秋の試験までとなります。上位資格にチャレンジする場合は一気にステップアップしていったほうがいいかもしれませんね。
ちなみに、応用情報技術者試験自体には科目免除制度がありません。そのため、下位レベルの試験に合格していても午前午後両方とも受ける必要があります。
他資格試験等の科目免除が受けられる
応用情報技術者を取得することで科目免除を受けることのできる資格があります。これは基本情報技術者試験までにはないメリットとも言えます。科目免除が使えるのは下記の試験です。
- 弁理士試験(理工V・情報)
- 中小企業診断士(経営情報システム)
今の所、この免除に関しては有効期間はないようです。どちらの資格も高難易度ですがその分高レベルな資格ですので、チャレンジしてみるのもいいでしょう。
このメリットについても基本情報技術者にはないものです。
応用情報技術者試験のデメリット
メリットに引き続いて、デメリットも書いていこうと思います。受けようと思っている方は、メリットだけでなく、デメリットも勘案した上で受けるか否かを判断しましょう。
独占業務はない
メリットを色々と書いてきた応用情報技術者試験ですが、実のところこの資格を持っていないとできないような独占業務というものはありません。
この資格を持っていなくてもIT業界で働くことはできます。あくまでITに関して相応の知識を持っているということの客観的な証明手段に過ぎないことは覚えておきましょう。
極端な話、実務で技量を持っていることが証明できるのであれば、無理に取得する必要はないかもしれませんね。
試験難易度は高い
高評価が得られる試験の宿命ではありますが、応用情報技術者試験においては幅広い分野の知識が必要になるぶん、試験の難易度は高めです。
ただパソコンに強いだけだと試験に太刀打ちするのは難しいです。
午後試験は科目選択にできるため、ある程度苦手な科目を回避することも可能ですが、午前試験は全ての範囲から出題されるため、満遍なく抑えておく必要があります。
また、下位レベル試験においては回答が全てマークシート方式であったため、最終的には運を天に任せる戦術も使うことができましたが、応用情報技術者試験は午前中がマークシートで、午後は記述式になります。そのため、ある程度の論述力も必要になります。
こういった要因から難しい試験として見られやすく、合格率は約20%とされているようです。基本情報技術者と比べてそこまで変わらないように思えるかもしれませんが、応用情報技術者試験の受験者層は基本情報技術者レベルの知識を既に持っている前提である人が多いことを踏まえると、未経験で受験をするならば、実際の合格率は更に低く見積もったほうがいいでしょう。
合格に必要な勉強時間は、未経験者でおおよそ500時間、基本情報技術者試験合格者や実務経験者といった基礎知識のある人で200時間程度と言われています。
IT企業以外からの評価はそれほどでもない
先程IT企業からは高い評価を得られると書きましたが、その一方で他の職種における評価はそれほど高くないようです。
例えば法律相談所や病院といったITとは別の専門知識の必要なところにおいては、そこまで活躍できるわけではありません。これは、簡単に言えば土俵の違いなのである意味仕方のないことと言えるでしょう。
応用情報技術者は評価を受けやすい資格ですが万能というわけでもありません。
適材適所という言葉があるように、自分のやりたいことやなりたいものを考えたときに、応用情報技術者試験を受けることがしっかりニーズに合っているか否かはしっかり考えましょう。
有効期限はないが、勉強をサボると知識が陳腐化する
応用情報技術者試験は一回合格すれば更新期限のようなものはないため、生涯有効な資格となります。
その一方で、試験の中で学ぶ情報技術や法律というものは日々進化していきます。特に情報技術は5年もすれば大きく変わるものです。
今どきフロッピーやワープロの知識を充実させても無意味ですよね?
一度試験に合格したからと言っても、そこから勉強することを怠れば、あっという間に置いていかれます。
上位資格受験時の一部免除が2年間のみ有効であったり、そのうちの一つである「情報処理安全確保支援士」においては登録すると定期的な講習が義務化されるというのも、ITの進歩速度が理由なのだと推察できます。
私も25年前に第2種情報処理技術者試験に合格したからIT知識はそれなりに持っているつもりだ。
ん?IPv6だって?そんなものは知らん。v4の間違いだろう!
何だこの青いUSB端子は!不良品じゃないのか!?
この人、試験合格してから勉強してないんだな…
ちなみに、第2種情報処理技術者試験とは平成12年度までの基本情報技術者試験の呼び名です。
逆に、資格を持っているのに知識が古いままであると「資格を持っているのに全然役に立たない」と大きくマイナスのイメージを植え付けることにもなりかねません。
試験に受かったからといって慢心することなく、日々進歩していくITに触れて知識のアップデートをしていきましょう。
この記事では応用情報技術者試験の概要について説明してきました。
続きはコチラ
今回の所はこの辺で。
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