航空無線通信士に続いて、あることをきっかけに第2級陸上特殊無線技士の受験も考えるようになりました。
この記事では、第2級陸上特殊無線技士の概要や、メリット・デメリットについて書いていきます。
資格の概要
第2級陸上特殊無線技士(長いので以降は2陸特と略する場合があります)とは、電波法で定められている無線従事者資格の一つであり、簡単に言えば「一定規模までの陸上無線設備の技術的な操作ができる免許」のことです。
法令には、以下のように記されています。
第三条(操作及び監督の範囲) 第2級陸上特殊無線技士部分抜粋
e-Gov 法令検索 電波法施行令
- 次に掲げる無線設備の外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさないものの技術操作
- イ 受信障害対策中継放送局及びコミュニティ放送局の無線設備
- ロ 陸上の無線局の空中線電力十ワット以下の無線設備(多重無線設備を除く。)で千六百六・五キロヘルツから四千キロヘルツまでの周波数の電波を使用するもの
- ハ 陸上の無線局のレーダーでロに掲げるもの以外のもの
- ニ 陸上の無線局で人工衛星局の中継により無線通信を行うものの空中線電力五十ワット以下の多重無線設備
- 第三級陸上特殊無線技士の操作の範囲に属する操作
中身をかみ砕いて説明する前に、2項にある「第3級陸上特殊無線技士」の操作範囲についても紹介します。
第三条(操作及び監督の範囲) 第3級陸上特殊無線技士部分抜粋
e-Gov 法令検索 電波法施行令
- 陸上の無線局の無線設備(レーダー及び人工衛星局の中継により無線通信を行う無線局の多重無線設備を除く。)で次に掲げるものの外部の転換装置で電波の質に影響を及ぼさないものの技術操作
- 空中線電力五十ワット以下の無線設備で二万五千十キロヘルツから九百六十メガヘルツまでの周波数の電波を使用するもの
- 空中線電力百ワット以下の無線設備で千二百十五メガヘルツ以上の周波数の電波を使用するもの
相変わらずわかりにくい表現なので、かみ砕いた説明をします。
まず、「無線設備の操作」には大きく分けて「通信操作」と「技術操作」があります。
「通信操作」とは、マイクロホン等を使って実際に通信を行う操作のことです。簡単に言えば、マイクで音声を発したり、レーダー電波を発信したりと、実際に電波を出して行う操作です。
「技術操作」とは、通信操作に対応して、無線設備の調整及びこれに付随する操作です。上の文では「外部の調整部分の技術操作」とありますが、これは無線設備についているスイッチ類の操作のことを示していると考えて問題ありません。
これを踏まえてまとめると、2陸特の操作範囲はおおよそ以下のとおりです。
2陸特は、
- 受信障害向け放送中継局や、ローカル放送局機器のスイッチ操作
- 陸上無線設備のうち、1606.5kHz~4000kHzの電波を使用する機器のスイッチ操作
- 上記に当てはまらない陸上のレーダーのスイッチ操作
- 人工衛星の中継により無線通信を行う無線局のうち、空中線電力50W以下のもののスイッチ操作
- 空中線電力50W以下の陸上無線設備で25010kHz~960MHzの周波数を扱うもののスイッチ操作
- 空中線電力100W以下の陸上無線設備で、1215MHz以上の周波数を扱うもののスイッチ操作
ができるようになる免許です。
なお、技術操作に「電波の質に影響を及ぼさないもの」と書かれていますが、これは周波数やパルス幅など、発射する電波の質が変わるような操作、例えば発振装置の組み換えなどのことを示しています。
電源スイッチの切り替えや音量調整、スイッチによる決められた範囲での周波数変更などが「電波の質に影響を及ぼさないもの」となります。
一般的には、スイッチによる機器操作であれば「電波の質に影響を及ぼさないもの」になるようです。
この免許の中では「技術操作」についてしか触れられていませんが、では「通信操作」には別の免許が必要なのかといえば、実はそうでもありません。
電波法施行規則には無線従事者の資格を要しない「簡易な操作」が定められており、その中にこんな一文があります。
第三十三条(簡易な操作)
法第三十九条第一項本文の総務省令で定める簡易な操作は、次のとおりとする。ただし、第三十四条の二各号に掲げる無線設備の操作を除く。
(中略)四 次に掲げる無線局(特定無線局に該当するものを除く。)の無線設備の通信操作
e-Gov法令検索 電波法施行規則
(1) 陸上に開設した無線局(海岸局((2)に掲げるものを除く。)、航空局、船上通信局、無線航行局及び海岸地球局並びに次号(4)の航空地球局を除く。)
この定めにより、陸上の無線局の通信操作は免許がなくても行うことができるようになっているため、資格に通信操作に関する記載がされていないのです。
ただし、無免許で全ての陸上無線局の通信操作ができるわけではありません。
モールス信号等例外がありますので、気になった方は法規を読み込んでみましょう。
また、あくまで無免許でできることは「通信操作のみ」であり、例えば通信機器のスイッチを入れたり、音量調節といった「技術操作」ができません。そのため、単独で無線設備を扱うには結局資格が必要になってくると考えた方がいいでしょう。
2陸特のメリット
ここからは、2陸特のメリットを書いていきます。
陸上無線局の多くが扱える
2陸特を持つことで、空中線電力50~100Wの機器を扱うことができますが、免許の必要な業務無線機の多くをカバーできるようになります。
手持ちでも車載でも、移動できるタイプの無線局は空中線電力50W以下が基本ですので、2陸特の範囲で十分対応できるのです。
また、業務目的でドローンを飛ばす場合にも資格が必要になってきます。
ここまではランクが一つ下の3級陸上特殊無線技士でもできるのですが、2陸特では無線機に加えてレーダーの使用もできます。
例えば、パトカーに搭載されている速度測定用レーダーなどを扱うこともできるようになるのです。
警察学校などでは、教育課程の間に2陸特を取得させることもあるそうです。
警察、消防、鉄道、バス、タクシーなど無線を扱う仕事においては必要となる場合があると覚えておきましょう。
取得が比較的容易
2陸特の資格は二つの理由から取得が比較的容易です。
一つ目は、試験の難易度がそこまで高くないことです。詳しくは難易度の項目で記載しますが、しっかり対策すれば無線初心者でも受かることは十分できます。
二つ目は、試験形式がCBT方式のため、全国の会場で随時受験ができることです。筆記試験方式のものであれば、試験会場はある程度限られ、時期も年数回のチャンスを狙って受けることになりますが、2陸特はCBTのテストセンターが近くにあれば、時期を限らずに手軽に受験することができます。
ちなみに、CBT方式は令和4年から開始されました。
資格手当などがもらえる場合がある
ある程度無線機器の取り扱いができるので、会社によってはこの資格を取ることで資格手当や褒賞金が出る場合もあるようです。
比較的難易度が低い試験なので、賞金目的というのもアリかもしれません。
詳しくは会社ごとの就業規則によるため、ご自身の所属する組織の規則を確認してみてください。
2陸特のデメリット
続いては、2陸特のデメリットを紹介していきます。
もちろん、取得自体が悪いことというわけではありませんので、悪しからず。
資格単独ではそこまで評価が高くない
取得が容易な資格なので仕方ないことではありますが、この資格単体での評価はそこまで高くはありません。
ある程度無線機器を扱うことができるようにはなりますが、そちらの道へ本格的に踏み入るとなればこの資格では力不足感は否めません。
陸上無線機器を本格的に扱う仕事をする場合は、「第1級(2級)陸上無線技術士」の取得を視野に入れるようにしてください。
陸上無線技術士になると難易度は格段に跳ね上がりますが、
その分操作範囲は広く、評価も高くなります。
アマチュア無線は扱えない
無線通信士・無線技術士クラスの資格であればある程度アマチュア無線も操作できるようになるのですが、この資格の操作範囲にはアマチュア無線局が含まれていません。
2陸特の無線工学試験では「無線設備の取り扱い方法」に重点が置かれている一方、アマチュア無線では「無線設備の理論・構造・機能」に関する知識が求められ、法規においてもアマチュア無線の試験に含まれる国際法規が2陸特にはなく、アマチュア無線で必要となる知識分野が十分に含まれていないためです。
アマチュア無線を扱ってみたい方は、アマチュア無線技士か無線通信士・無線技術士級の試験を受けるようにしましょう。
2陸特試験の難易度
2陸特の試験では、「無線工学」と「法規」の2科目が出題されます。
合格点はそれぞれの科目で60点満点に対し、40点以上で合格です。
一般的な合格率は70~75%、CBT方式となってからは80~85%程度で推移しており、合格は比較的容易です。
科目合格制度はありませんが、特に難しい試験ではないので、取得する際は一発で行けるよう準備しましょう。
さて、以上のとおり第2級陸上特殊無線技士についてまとめてみました。
次の記事では私の受験体験記を書いていきます。
続きはこちらからどうぞ。
今回の所はこの辺で。
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