前記事の続きです。
この記事では、情報処理安全確保支援士(旧情報セキュリティスペシャリスト。以下、本記事では「支援士」と呼びます)試験を実際に受けてみた体験記を書いていきます。
内容としては受験申込、勉強方法、試験準備、本番の流れ、終了後について書いてます。
情報処理安全確保支援士の試験勉強ってどんな感じにすればいいの?
試験当日ってどんな感じに動けばいいの?
陥りやすいことって何かある?
そんな方の参考になれば幸いです。
鉄は熱いうちに打て
私は執筆時点から1年前に応用情報技術者試験にチャレンジし、合格をいただくことができました。試験合格の恩恵として、合格から2年間は高度試験受験時に午前I試験を免除できるという特典があります。
試験を受けて知識が活性化された状態であったことと、このままチャレンジを終わらせるのもなんだか勿体ないと思ったことから、高度試験のチャレンジを考えるようになりました。
高度試験のうち、支援士試験を選んだ理由としては、大学時代にサイバーセキュリティに関する分野をよく学んでいたために、取っ掛かりやすいと感じたためです。
実は10年ほど昔、当時の「情報セキュリティスペシャリスト試験」に挑戦しようと勉強したこともあったのですが…
◯月◯日(試験日のある週末)は行事があるため、予定を入れることがないように。
あの、そこで試験受けようと思ってたんですが…
後出しの予定を組まれ、泣く泣く試験を諦めることになりました。この頃から職場に対しては若干の不信感を持つようになったものです。
さておき、今回は10年前のリベンジという側面も持ちつつ、自分自身のさらなるスキルアップを狙ってのチャレンジです。
受験の申込み
受験を決めてからは、まず試験の申込みです。
願書の受付期間は試験日の大体3ヶ月前から3週間程度と、意外と短いです。
2022年秋期試験は試験日が10月9日(日)で、願書受付期間が7月8日(金)~7月28日(木)の間でした。受験に際しては受付期間をしっかり確認し、ちゃんと申し込むようにしましょう。
なお、高度試験は支援士試験以外は基本的に年1回のみです。受験を決心して申し込もうとしたら、既に受付期間を過ぎていたとなると目も当てられませんので注意してください。
春季(4月試験) | 秋季(10月試験) |
ITストラテジスト試験(ST) システムアーキテクト試験(SA) ネットワークスペシャリスト試験(NW) ITサービスマネージャ試験(SM) 情報処理安全確保支援士試験(SC) | プロジェクトマネージャ試験(PM) データベーススペシャリスト試験(DB) エンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES) システム監査技術者試験(AU) 情報処理安全確保支援士試験(SC) |
支援士試験の受験手数料は7,500円です。インフレの波か知りませんが、少しずつ値上がりしているようです。
2021年春季までは5700円だった覚えが…
また、試験の一部免除を申請するためには、該当する試験の合格証書番号が必要になります。証書をなくして番号が思い出せないような事態は避けましょう。
合格証書をスキャンして、クラウドに保管しておくというのも割と便利です。
試験に向けた準備
受験を決意してからは、参考書を探し始めました。
ネットの評判も確認しつつ、書店にも足を運んで直接手に取り、参考書を選びました。
今回選んだのは「情報処理安全確保支援士 合格教本」でした。
試験に出てくる知識をわかりやすく書いてくれています。また、午後問題についてもカバーしてくれており、どのような問題が出てくるのか、そして解き方をわかりやすく解説してくれます。
なお、この参考書、下記の引用のように時々作者のダークな部分が出てくることがあり、それが結構面白かったりします。
本試験では,モバイルPC,携帯電話,スマホ,社員証などは,落とすため(あるいは盗まれるため)に存在します。
(中略)
落っことしたスマホは誰かが拾うのが道理です。そして本試験には善意の第三者は登場しません。人を見たら,セキュリティ侵害を狙うねずみと思わなければならないのがセキュリティ担当者です。著者もこの仕事を始めてからだいぶ人相が悪くなりました。物心ついた時期から悪かったので,今では店員さんが目を合わせてくれない水準です。心の受容水準を超えています。よい機会ですから,是非,受容水準についても復習をしてください。
「令和04年【春期】【秋期】情報処理安全確保支援士 合格教本」 665ページ
約800ページのボリュームがあり、その中にはセキュリティに関する知識が時にはユーモアをまじえながらふんだんに書かれています。
まずはこの参考書を主体に、第1部(知識のまとめ)を3周ほどして内容の網羅を行いました。
応用情報技術者試験を受けたのが2021年秋だったので、その気になれば2022年春の受験も可能ではありました。しかし流石に自身がなかったのと、その当時忙しかったというのもあったので、春期の受験は見送り、その分時間を見つけて参考書の読み込みを行いました。
参考書を3周ほどやったところで、今度は過去問演習を開始しました。
過去問演習には「情報処理安全確保支援士ドットコム」にある「過去問道場」の出番です。過去問道場は応用情報技術者試験の際にも活用させてもらってます。
支援士試験の過去問道場には、旧情報セキュリティスペシャリスト時代であった平成21年春期から現在に至る約650問の試験問題が集約されており、午前IIに特化した勉強を集中的に行うことができます。
なお、午前Iに関しては応用情報技術者試験用の過去問道場に通うのが効果的ですよ。
午前II試験でも、半分くらいは過去問から出題されますので、過去問演習をこなしておくことは非常に効果的です。
過去問道場である程度問題をこなしたところで、午後試験が不安になってきたので対策を考え始めました。
過去問道場のサイトではいくつか参考書のおすすめがありましたが、今回はその中でも「ポケットスタディ 情報処理安全確保支援士」が気になったので、書店で実際に手にとって確認し、買ってみました。
この本は試験で得点を取るためのコツを要約してくれてます。「合格への最短距離を提供する参考書」と銘打たれているだけあって、非常に簡潔にまとまっており、特に午後試験への特効薬となる可能性はあります。
ただし、簡潔にまとめられているぶん体系的な学習には不向きであり、この本を活かせるのは「他の参考書を網羅した学習経験がある人」「実務経験がある人」「受験が2回目以降の人」に限ります。最初からこの本を使うのはオススメできません。
なお、ポケットスタディはその名のとおり本のサイズが小さいので、スキマ時間での学習にも使いやすいです。
受験前の準備
試験を受ける数週間前になるとIPAから受験票が送られてきます。
得てして、「ちゃんと申し込みが受理されているか不安になってきたタイミング」くらいに届きますので、申し込み手続きを完了させているのならば気長に待ちましょう。
受験票には顔写真を貼り付ける必要があります。必要なのは縦40mm×横30mmの写真1枚です。
今どきはスマホで写真をとってコンビニで証明写真の印刷が300円位でできます。「証明写真 コンビニ」とかで探せば方法はすぐ見つかります。専用アプリを入れる必要があるものからブラウザで完結できるものまで様々です。
勉強の方も抜かりないよう、試験直前には過去問道場にある全650問にすべて回答し、学習の全期間を通した正答率は83.5%でした。
なお、支援士試験も合格点は午前午後とも60点以上です。ただし、午前I→午前II→午後I→午後IIの途中のどこかで落としてしまうと、以後の試験が採点されなくなってしまいます。
試験本番
注意
IPA公式サイトにおいて、令和5年度秋季試験からは午後問題の出題形式が変わる旨が告知されています。
私の記事では受験が令和4年秋季だったので午後I、午後IIに分けて受験した体験記を書いていますが、令和5年度秋季試験以降は午後I,IIの区分がなくなって一つの午後試験となり、試験時間が150分で記述式の大問4問中2問に回答する形式に変更されます。
出題内容的に大きく変わるわけではないようですが、受験を考えている方は出題形式が変わるということは頭の片隅においておきましょう。
いよいよ試験当日を迎えました。
近場のため、前回のように前日進出の必要がない分、当日までゆっくり準備に集中できました。
なお、私が準備した、当日の試験にかかわる持ち物は下記のとおりです。
- 0.5mmシャープペン×2
- 消しゴム×2
- 参考書(合格教本、ポケットスタディ)
- 受験票(写真つき)
- 腕時計
- 途中のコンビニで買った菓子パンと500ml飲料
時計のアラーム、スマホの着信音などが試験中に鳴ってしまうと強制退室を命じられることもありますので、試験前には確実に音が出ない設定になっていることを確認しましょう。
午前I試験免除者は10:30分迄に着席できればOKです。一部免除は朝の時間に余裕ができるという点でも有利です。なお、午前Iから受験する方は9:10までに着席です。
今回の受験場所は県内でも結構有名なホテルでした。
会場に到着すると、試験場とは思えないようなゴージャスな造り。試験を受ける部屋はまるで結婚式の披露宴でも行うのかと言わんばかりの空間でした。
見栄え重視のためか、長机にはしっかりカバーが掛けられ、豪華な雰囲気でしたが、カバーがレースのような生地で、机に凸凹ができてました。筆記試験を行うには少々不安のある材質でしたが、それを補うべく、受験者の席には厚紙が置かれていました。
正直、長机だけのほうが受験者的には良かったと思うのですが、見栄えを重視するのはホテルのプライドのようなものなんでしょうかね…?
私は午前I試験は免除でしたが、応用情報技術者試験の午前試験に出るような内容がマークシート方式で30問出題されます。セキュリティ以外にも幅広い範囲の出題がされますので、結構大変そうです。試験時間は50分なので、1問あたり1分40秒の計算ですね。
さて、午前II試験が開始となりました。午前IIの問題数は25問のマークシート方式であり、試験時間は40分しかないため、単純計算して1問あたり1分36秒、受験番号の記入等の時間を加味すればさらに少ない時間しか使えないことになります。そのためスピーディな回答が求められます。
また、応用情報技術者試験と違って午前試験での途中退出はI、IIともにできません。
午前II試験問題では、セキュリティのほか、データベース、ネットワーク、システム開発技術、ソフトウェア開発管理技術、サービスマネジメント、システム監査に関する内容が午前I試験よりも掘り下げられて出てきます。過去問道場で見たことのあるような問題が多かったですが、微妙に内容が変わってたり、選択肢が変えられていたりと一筋縄ではいかず、過去問道場のノリで反射的に回答すると間違える場合もあります。とはいえ、過去問演習が有効であったことは間違いありません。
11:30まで試験をやってから解答用紙が回収され、次は12:10までに着席なので昼休みは正味30分程度しかありません。昼食とトイレをさっと済ませて午後試験に向けた最終チェックを行います。
午前問題はマークシートの選択式でしたが、午後は記述式です。
開始までしっかりと準備をしていきますよ。
午後I試験は大問が3問あるうちの2問を選択する記述式で、問題のボリューム的には大問一つあたりB5版冊子で4ページ程度です。試験時間は90分であり、1問あたりに使える時間は45分です。しっかり時間管制しながら問題を解いていきましょう。
試験が終わったあと、次の試験開始は30分後ですが、着席完了は試験開始の20分前とされていますので、実質休憩時間は10分しかありません。トイレなどは混雑する可能性が高いので、あらかじめ使える場所を複数探しておいたほうがいいでしょう。
午後II試験は2問あるうちの1問を選択する記述式です。問題文がとにかく長いです。B5版の問題冊子で1問あたり10ページ近く書かれており、そこから正解を導き出します。試験時間は120分と比較的余裕はあり、じっくり考えることはできます。長い問題なので途中で詰まると若干焦りますが、よくよく考えると過去問での回答パターンに似ている場合が多いです。そのため、ポケットスタディを用いた過去問演習は個人的に効果があったと感じました。
いずれの問題にせよ、回答に詰まった問題は飛ばし、まずは最後まで回答しきってから飛ばした部分を埋めるように進めました。いつまでも詰まると先の問題を考える余力がなくなると思ってのことでしたが、これは有効な手段でした。合わないと思った場合は大問を変えることも視野に入れましょう。
また、多くの問題は問題文をよく読んでみると答えになる文が書いてあるものです。どちらかといえば国語のテスト感があるかもしれません。回答に詰まったときは、よく問題文を読み直してみるといいでしょう。
最終的に、解答欄はすべて埋めることができたのです。
試験を終えて
試験では久々に頭をフル回転した気分でした。頭痛が翌日まで残るほどです。
余裕ができたところで自己採点を恐る恐るやってみました。公式からの模範解答は合格発表日までありませんが、資格の学校TACなどが試験日から近いうちに解答速報を出してくれますので、それを参考にします。
その結果、午前IIが68点、午後Iが74点、午後IIが71点と、一応は合格点を取ることができたみたいです。
午前IIについては思ったよりも点数が伸びませんでした。過去問道場に救われた感があります。
合格発表は試験日から約2ヶ月先です。合格できている可能性はあるものの、実際がどのような結果になるかは現時点ではわからないので、結果が待ち遠しいところです。
しばらく勉強漬けだったので、試験が終わってからは読書をするようにしました。
そして月日は過ぎ、いよいよ合格発表の日になりました。
うーん、私の番号は….無い?
あ、違った。隣のページか…って、あったーーー!!
一瞬番号がなくてめちゃくちゃビックリしましたが、間違えて隣のページを見てたようです。
そして、本命のページに自分の番号があることを確認できました。奇跡の一発合格です。
やっとのことで安心できたので、成績照会をしてみました。
受験票が来たとき、控えにはパスワードが記載されています。IPAのHPで一定期間は受験番号とこのパスワードを使うことで成績照会と得点の分布が確認できます。
午前I試験 | 免除 |
午前II試験 | 68点 |
午後I試験 | 66点 |
午後II試験 | 77点 |
自己採点に比べると、午前IIは予想通りで、午前Iは思ったより低く、逆に午後IIが高かったようです。
試験の得点分布は以下のとおりです。
得点 | 午前I試験 | 午前II試験 | 午後I試験 | 午後II試験 |
90~100点 | 94名 | 332名 | 200名 | 235名 |
80~89点 | 413名 | 1700名 | 746名 | 431名 |
70~79点 | 1078名 | 2105名 | 1654名 | 913名 |
60~69点 | 1471名 | 3276名 | 2027名 | 1203名 |
50~59点 | 1360名 | 1420名 | 1428名 | 946名 |
40~49点 | 897名 | 1046名 | 807名 | 545名 |
30~39点 | 413名 | 216名 | 343名 | 234名 |
20~29点 | 82名 | 56名 | 95名 | 85名 |
10~19点 | 6名 | 4名 | 14名 | 16名 |
0~9点 | 1名 | 1名 | 11名 | 17名 |
合計 | 5815名 | 10156名 | 14903名 | 4625名 |
今回の試験では、午後IIを除いておおよそ中央値付近の点数であったということが読み取れました。
何はともあれ、合格をいただくことができたのは確かなので良しとします。
2012年に基本情報技術者を受けてから早10年、IPA試験のレベル4まで取得することができたので、一つの良い区切りになったと思います。
もちろん、勉強は続けていきますよ。
2023年1月、合格証書が届きました。証書は簡易書留で届きますので、受け取りの際は印鑑を用意しましょう。
証書と一緒に、登録申請に関する案内も送られてきました。
しかし、現時点では特に業務で使っていない現状なので、登録については見合わせ、今後仕事で必要になったタイミングで行おうと思います。
合格証書の有効期限は現時点ではありません。今名乗るとしたら、「情報セキュリティスペシャリスト」になるのでしょうか。
ともかく、一つの良い区切りにできたと思います。合格実績を自分のキャリアとして活用していければと思います。
今回の所はこの辺で。
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